銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】ブレス しあわせの呼吸

劇場で観た映画を適当に紹介するシリーズ’18-61
 

うんちく

28歳でポリオを発症し、首から下が麻痺して余命宣告を受けた男性とその妻、その夫婦を支え続けた人々の闘いを描いたドラマ。『ブリジット・ジョーンズの日記』シリーズなで知られる名プロデューサー、ジョナサン・カヴェンディッシュの両親の実話が基になっている。メガホンを取ったのは『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズや『猿の惑星』シリーズの出演で知られる俳優アンディ・サーキス。『ハクソー・リッジ』でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされたアンドリュー・ガーフィールドが主演を務め、『ミスティック・アイズ』などのクレア・フォイらが共演。
 

あらすじ

1950年代、イギリス。運命の恋に落ち、皆に祝福され幸せな結婚生活を送っていたロビンとダイアナ。ダイアナが妊娠していることが判明し、彼らは喜びの絶頂にいたが、出張先のナイロビで突然ロビンが倒れてしまう。診断結果はポリオ、首から下が麻痺して人工呼吸器なしでは生きられない体になってしまい、医師からは「余命数ヵ月」を宣告される。絶望し、死にたいと繰り返すロビンだったが、医師の反対を押し切って自宅介護を決意したダイアナの愛情によって、生きる気力を取りしていく──
 

かんそう

ポリオについて調べてみた。ほんの半世紀ほど前まで人類にとって脅威の病だったが、1950年代に開発されたワクチンによって患者数が大きく減少したとのこと。日本では、1960年にポリオ患者の数が5千人を超え大流行したそうだが、生ポリオワクチンの導入によって沈静化し、1980年を最後に野生のポリオウイルスによる患者は出ていない。ジョナサンの父親ロビンがポリオを患ったのは1950年代後半、過渡期にあたるだろう。不幸にも、首から下が麻痺して人工呼吸器が無ければ2分と生きられない境遇になってしまった。当時の医療技術では、病院から出ることなど考えも及ばない状況である。しかし、無償の愛情を持ってポジティブに行動を起こしてきたダイアナの強い意志と、夫婦を支え続けたダイアナの双子の兄や友人たちとの絆が、実話とは思えない奇跡を起こしていくのだ。常に笑顔とユーモアを絶やさず、生き生きと自分の人生を全うしたロビンに悲愴感はなく、生きることってなんだっけ、と、自分の生き方と照らし合わせてみたりする。かつて「健常でなくなった人」に対する人権がどのようなものであったか、という描写も興味深い。しかしながら、物語が時系列で単調に紡がれるので、いささか眠気を誘う・・・。もっと工夫できたのではと思ってしまう月並みな構成と演出で、特記すべき点は特にない。が、作品全体を覆うやさしくあたたかい空気は、一見に値する。