銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】彼女が目覚めるその日まで

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劇場で観た映画を適当に紹介するシリーズ’17-76
『彼女が目覚めるその日まで』(2016年 カナダ,アイルランド)
 

うんちく

2009年に「抗NMDA受容体脳炎」を発症したニューヨーク・ポスト紙の記者スザンナ・キャハランが、壮絶な闘病の日々を医療記録や家族の日誌などから再現したノンフィクションを発表、全米で大ベストセラーとなった。この衝撃の実話に感銘を受けたオスカー女優のシャーリーズ・セロンがプロデュースに乗り出し映画化を実現。監督は新鋭ジェラルド・バレット、『キック・アス』のクロエ・グレース・モレッツが主演を務めた。『ホビット』シリーズのリチャード・アーミティッジ、『マトリックス』シリーズのキャリー=アン・モス、『キングコング:髑髏島の巨神』のトーマス・マンらが脇を固める。
 

あらすじ

憧れのニューヨーク・ポスト紙で働く21歳のスザンナ・キャハラン。一流の記者になる夢へと突き進み、付き合い始めたばかりのミュージシャンの恋人スティーヴンとの関係も良好で、公私ともに充実した日々を送っていた。そんなある日、急に物忘れが激しくなり、トップ記事になるはずの大事な取材で大失態を犯してしまう。幻覚や幻聴に悩まされ、全身が痙攣する激しい発作を起こして入院するが、検査をしても結果は異常なし。会話すらできなくなったスザンナに医師たちは精神科への転院を進めるが、両親とスティーブンはその診断に疑いを抱き…..。
 

かんそう

原題は”BRAIN ON FIRE”であり、原作著書の邦題は「脳に棲む魔物」である。マーケット狙いのダサすぎる邦題のせいで何年か越しの花嫁と同じ括りにされちゃうけど(あれはあれで、実話は感動したけども)、これは抗NMDA受容体自己免疫性脳炎を1人でも多くの人に認知させ、無知による誤診によって救われない人を1人でも減らすための啓蒙映画である。そして、このよろしくない邦題のせいで先入観が生まれ、導入が長いと感じてしまう。これは罪深い・・・!配給会社は反省しなさい。さて、抗NMDA受容体自己免疫性脳炎は、細菌やウイルスから身体を守るはずの抗体が間違って自分の脳を攻撃してしまう免疫異常である。映画『エクソシスト』のモデルとなった少年も、この病気の疑いがあると言われている。その昔、狐憑きや悪魔憑き、あるいは精神病と片付けられ、闇に葬られてきた人々も、本当は救われたのかもしれない。彼女の場合、自分の娘を最後まで信じた両親の信念が、真実を見つけ出した。日本でも年間1000人ほどが発症していると推定されており、決して他人事ではない。その点からも、見応えある作品であった。それにしてもクロエたん大人になったなぁ。そして『ギフテッド』にも出演してたジェニー・スレイトが個人的注目株。