銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】ベン・イズ・バック

劇場で観た映画を適当に紹介するシリーズ’19-35
『ベン・イズ・バック』(2018年 アメリカ)
 

うんちく

薬物依存症の治療施設を抜け出してきた息子を守ろうとする母親の愛情を、サスペンスフルに描いた人間ドラマ。『プリティ・ウーマン』『エリン・ブロコビッチ』などで知られるジュリア・ロバーツ、『マンチェスター・バイ・ザ・シー』『スリー・ビルボード』などのルーカス・ヘッジズが親子を演じる。ルーカスの父親でもあり、名作『ギルバート・グレイプ』の原作・脚本を手がけたピーター・ヘッジズが監督・製作・脚本を務めた。『スリー・ビルボード』などのキャスリン・ニュートン、『犬ヶ島』などのコートニー・B・ヴァンスらが共演。
 

あらすじ

クリスマス・イヴの朝。薬物依存症の治療施設で暮らす19歳のベン・バーンズは突然実家に戻り、家族を驚かせる。母ホリーが久しぶりの再会に喜ぶ一方で、疑い深い妹のアイヴィーや、冷静な継父のニールは、過去の経緯から、ベンが何か問題を起こすのではないかと不安を抱いていた。話し合いの結果、ホリーが監視することを条件に一晩だけ家族と過ごすことを認めれらる。しかしその晩、一家が教会でのクリスマスの催しから戻ると、家の中が荒らされ、愛犬が連れ去られていた。昔の仲間の仕業だと確信したベンは、愛犬を取り戻すため、家を飛び出すが...
 

かんそう

いつかのプリティ・ウーマン、あるいはノッティングヒルの恋人ことジュリア・ロバーツがすっかりお母さんに。非常階段を駆け上がって迎えに来てくれるリチャード・ギアや、街中を駆け回って探してくれるヒュー・グランドが現実世界に実在するわけないけど、その節は、世界中の女子に夢を見させてくれてありがとうございました。さて、第二のキャリアとも言える肝っ玉母さん役が板についてきたジュリア・ロバーツの息子役はルーカス・ヘッジズ。『マンチェスター・バイ・ザ・シー』『スリー・ビルボード』などの秀作に出演し、独特の存在感を放ってきた新進気鋭の若手である。これまでルーカスは父親であるピーター・ヘッジズ監督の作品に出ることを頑なに拒んできたらしいのだけど、脚本を読んだジュリア母さんが息子ベンの適役はお宅の息子しかおらんやないかいと監督に食い下がり、その圧に押されるかたちで出演したそうだ。深刻な薬物依存で更生施設に入所しているはずの息子が突然帰宅し、手放しで歓迎する母親を尻目に戸惑う家族の様子、過去の過ちが引き金となりトラブルに巻き込まれていく24時間がスリリングに描き出される。アメリカでは、病院で処方されるオピオイド鎮痛薬によって薬物依存に陥るケースが後を絶たず、社会問題になっているそうだ。ルーカス演じるベンもその一人で、薬物を手に入れるために手段を選ばず、また、ディーラーとなり売買にまで手を染めていた忌まわしき過去が明かされていく。薬物依存と闘った親子の物語としては、父と息子、2つの手記を元にした『ビューティフル・ボーイ』が秀作だったので、それに比べるとドラマに奥行きがなく、どこかリアリティが無い。ジュリア母ちゃん頑張ってるなー、という感想以外抱かなかったのが正直なところ。せっかくルーカスが意を決して父ちゃんの映画に出たのに、残念である。次に期待したい。