銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】1917 命をかけた伝令

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映画日誌’20-10:1917 命をかけた伝令
 

introduction:

アメリカン・ビューティー』『007 スペクター』などで知られる名匠サム・メンデスによる戦争ドラマ。第一次世界大戦を舞台に、重要なミッションを与えたれた若きイギリス人兵士2人の1日を壮大なスケールで描く。主演は『はじまりへの旅』などのジョージ・マッケイと『リピーテッド』などのディーン=チャールズ・チャップマン。コリン・ファースベネディクト・カンバーバッチマーク・ストロングらイギリスを代表する実力派が脇を固める。製作陣には、『ブレードランナー2049』で撮影賞を獲得したロジャー・ディーキンス、『ダンケルク』で編集賞を獲得したリー・スミスら名手が集結。全編を通してワンカットに見える映像を創り上げ、第92回アカデミー賞では作品賞、監督賞を含む10部門でノミネートされ、撮影賞、録音賞、視覚効果賞を受賞した。(2019年 イギリス,アメリカ)
 

story:

第一次世界大戦開戦から、およそ3年が経過した1917年4月。フランスの西部戦線では、防衛線を挟んでドイツ軍と連合国軍のにらみ合いが続いていた。そんな中、イギリス人兵士のスコフィールドとブレイクに、撤退したドイツ軍を追撃中のマッケンジー大佐の部隊に作戦の中止を知らせる重要な任務が命じられる。部隊が進行する先にはドイツ軍による罠が張り巡らされており、この伝令が明朝までに間に合わなければ、ブレイクの兄を含む1600人もの兵士が命を落とし、イギリスが敗北することになるが...
 

review:

私にとってのサム・メンデスは、”『アメリカン・ビューティー』の人”である。愚かで滑稽な人間の姿をユーモアと皮肉と愛情で包んで、アメリカの平凡な家庭が狂気を孕みながら崩壊していくさまを冷ややかに映し出した問題作だ。クライムサスペンスだった脚本を、いざ撮影してみたら、あれ、じゃなくない?みたいな感じで法廷シーンなどをばっさりカットしちゃって社会派ドラマに仕立て上げたサム・メンデス。サスペンスだと思って演じていた俳優陣も、完成した映画観て度肝抜かれたらしいよ・・・。そんな確信犯が「全編を通してワンカットに見える映像」で観客の度肝を抜いたんだが、「全編ワンカット映像」と誤解を招く記載をしたメディアも少なくなかったため、実際に観た人が「ワンカットじゃないやん!」ってがっかりする現象も起きたし、そうじゃないって知ってる人も、一体どこが繋ぎ目なんだと躍起になって探してしまったことだろう。私もそうだ。監督が、映画に集中してもらうため敢えて無名の俳優を起用したって言ってたけど、スコ氏はどこかで見たことがあると思ってたら『はじまりへの旅』の長男だったし、あ、この軍曹見たことある、誰だったっけ?と思いを巡らせてたら将軍役のコリン・ファースを見落とし、エンドロールで、あれ、コリン・ファースどこ?ってなった。ちなみに新年早々に見たイギリス映画の主演だった。と、割とどうでもいいことに字数を割いてしまったが、どうでもいいことに気を取られていたとしても没入感が半端ないのである。類を見ない究極の臨場感で、人と人が直接殺し合っていた、第一次世界大戦塹壕に連れていかれるのだ。死屍累々の戦場、ドイツが優勢であることが一目瞭然の独軍要塞、チェリーの花、オフィーリアのごとき川流れ、照明弾が作り出す光と陰、辿り着いた兄の慟哭。どれほど緻密な計算をして創り上げたのかと思うと、気が遠くなる。サム・メンデス先生のお仕事拝見いたしました。という語彙力のない感想しか出てこないし、超不謹慎なことを言うと、119分間ディスニーのアトラクションに乗ってる気分であった。IMAXでおかわりしたいと思っているが、監督によるとDolby Atmos推奨とのこと。筆舌に尽くし難い貴重な映画体験であったが、ただ一点、メンデス先生、なんであそこ暗転したん・・・っていうことだけ聞きたい。
 

trailer: