銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】マーウェン

劇場で観た映画を適当に紹介するシリーズ’19-42
『マーウェン』(2018年 アメリカ)
 

うんちく

バック・トゥ・ザ・フューチャー』『フォレスト・ガンプ/一期一会』のロバート・ゼメキス監督が、ジェフ・マルムバーグ監督のドキュメンタリー『マーウェンコル』をフィクションとして映画化したヒューマンドラマ。イラストレーターだったマーク・ホーガンキャンプが、ヘイトクライムの被害に遭って全てを失いながらも、独自の世界観でカメラマンとして活躍する姿を描く。主演は、『バイス』『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』『ビューティフル・ボーイ』などのスティーヴ・カレルレスリー・マンダイアン・クルーガー、メリット・ウェヴァーらが共演している。
 

あらすじ

イラストレーターのマーク・ホーガンキャンプは、バーで絡まれた5人の男に暴行され、瀕死の重傷を負う。9日間の昏睡状態から目覚めた彼は、事件はおろか成人後の記憶をほとんど失い、歩くことや食べることもままらない状態だった。脳に障害を抱え、PTSDに苦しむマークはまともな治療も受けられず、セラピー代わりにフィギュアの撮影を始める。自宅の庭に作った空想の世界“マーウェン”では、第2次世界大戦を時代背景にG.Iジョーのホーギー大尉と5人のバービー人形が、迫り来るナチス親衛隊と日々戦いを繰り広げていた。その様子を撮影したマークの写真は次第に評価されるようになり、やがて個展が開かれることになるが...
 

かんそう

2000年4月8日、38歳のマーク・ホーガンキャンプは、ニューヨーク州郊外のバーで出会った若者から暴行を受け、瀕死で放置されているところを発見された。9日後、意識を取り戻した時には事件はおろか、成人後の記憶がほぼなく、食べる、歩く、文字を書くなど基本的なことすらできなかったという。公的な補助が打ち切られてしまい、まともな治療を受けられなくなったホーガンキャンプは、脳に障害を抱え酷い後遺症(PDSD)に苦しみながらも、自分や周囲の人たちを模した6/1フィギュアの写真を撮り始めた。という実話を、ジェフ・マルムバーグ監督がドキュメンタリー映画『マーウェンコル』として公開。それをロバート・ゼメキス監督が映画化したのが本作である。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』『フォレスト・ガンプ/一期一会』などで知られる巨匠、ゼメキス監督の新作として期待されながらも、本国アメリカでは大コケ。初週に1190館で公開され興行収入は2400万ドル。製作費が3900万ドルで、マーケティングや配給にかかったコストを考慮すると4500~5000万ドルの損失が予想されるとのこと。なんということでしょう。そのせいあってか、国内の公開劇場の少なさよ。しかしバック・トゥ・ザ・フューチャー世代はゼメキス監督を無視できないので、とりあえず観た。フィギュアが躍動する”マーウェン”世界のシーンは、人形らしさをしっかりと残しつつも迫力があり、次第に現実世界との線引きが曖昧になり混乱していくさまは、時にスリリングでもあった。バック・トゥ・ザ・フューチャーのファンなら垂涎のシーンもあり、視覚効果も含めてさすがロバート・ゼメキス監督のおしごと。作品を彩る音楽のチョイスが絶妙で、何と言ってもアラン・シルベストリのスコアが見事。にも関わらず、なぜ面白くないのか。おそらく、物語としていまひとつ、全体的にだらだらと締まりが無い。そして身も蓋もないこと言うと、ミスキャストである。フォックス・キャッチャー、バトル・オブ・ザ・セクシーズ、ビューティフル・ボーイ、バイスなどの良作で印象を残してきたスティーブ・カレルは言わずもがな名優だけれども、マークを演じるにはどこか不自然さ、違和感があった。バック・トゥ・ザ・フューチャーでマーティはやっぱマイケル・J・フォックスがいいってエリック・ストルツを降板させたゼメキス監督にしては、残念な判断だったと個人的に思う。果たして観る価値がないかと問われると、これまた微妙なのである。なんとも悩ましい作品であった。