銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】ガーンジー島の読書会の秘密

劇場で観た映画を適当に紹介するシリーズ’19-49
ガーンジー島の読書会の秘密』(2018年 フランス,イギリス)
 

うんちく

『マリーゴルド・ホテルで会いましょう』『スリー・ビルボード』を手掛けたプロデューサー陣が、第2次世界大戦中に英国で唯一ナチス・ドイツ占領下にあったチャネル諸島ガーンジー島を舞台に描くミステリー。『フォー・ウェディング』『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』のマイク・ニューウェルが監督を務め、主演はシンデレラ』などのリリー・ジェームズが演じた。マシュー・グード、ペネロープ・ウィルトンらTVシリーズダウントン・アビー」のキャストが顔を揃え、『さざなみ』などのトム・コートネイ、ドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」シリーズなどのミキール・ハースマンなどが共演している。
 

あらすじ

1946年、終戦の歓びに沸くロンドン。作家のジュリエットは、一冊の本をきっかけに”ガーンジー島の読書会”のメンバーと手紙を交わすようになる。ナチスドイツの占領下にあった第二次世界大戦中、読書会とその創設者であるエリザベスという女性の存在が、島民の心の支えになっていた。本が人と人の心を繋いだことに魅了されたジュリエットは取材のために島を訪ねるが、そこにエリザベスの姿はなかった。残された読書会のメンバーと交流するうちに、彼らが重大な秘密を隠していることに気付いたジュリエットだったが...
 

かんそう

恥ずかしながらナチス・ドイツによるチャンネル諸島占領について知識がなかったので、観賞後ググってみる。第二次世界大戦下の1940年から1945年にかけて、英国のなかでは唯一、チャンネル諸島だけがナチス・ドイツによって侵略・占領された。1443年にはドイツ軍最大規模となる4万人の兵士が送り込まれ、ガーンジー島においては島民に対するドイツ軍兵士の数が1対1の割合にまで拡張された。フランス本土の120対1の割合に比べても極めて大きい数字である。そのため兵士たちは、高い頻度で一般家庭に宿泊していたそうだ。それだけでもストレスフルな状況だが、1944年6月のノルマンディー上陸作戦以降、戦況が不利となったドイツ軍からの補給が途絶えたチャンネル諸島の防衛軍によって、島の食糧は没収され、島民全員が捕虜として扱われるようになった。ドイツが降伏するまで筆舌に尽くしがたい島民の受難は続き、多くの犠牲が払われたそうだ。映画って勉強になるよね!(語彙力) さて、リリー・ジェームズ演じる女流作家のジュリエット、どうやら終戦までは男性の名で本を出版していたことが描かれている。ここ最近、才能ある女性が男性の名で出版しなければいけなかった時代を扱った映画がいくつか公開されてきたが、そうした細かいディティールの描写も含めて、よく練られた脚本で丁寧に作られた作品という印象。実際のところ、原作のほうが随分と秀逸らしいが、美しい島の風景、魅力的な登場人物たち、そして彼らの口から少しずつ語られる記憶の断片をつなぎ合わせて、少しずつ真実が浮かび上がってくるストーリーに引き込まれ総じて面白かった。そして何故か、自然に囲まれて自家製ジンを作って暮らす生活っていいなぁ、と、少々エキセントリックなアイソラさんにシンパシーを感じたのであった・・・将来は山の奥でどぶろくでも・・・(違法)