銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】セルジオ&セルゲイ 宇宙からハロー!

劇場で観た映画を適当に紹介するシリーズ’18-80
セルジオ&セルゲイ 宇宙からハロー!』(2017年 スペイン,キューバ)
 

うんちく

実在する元宇宙飛行士で“最後のソビエト連邦国民”と呼ばれたセルゲイ・クリカレフをモデルに、国境を越えた友情を描くバディ・コメディ。政変の煽りを食らい地球帰還が何度も延期された宇宙飛行士を救うため、キューバの大学教授が奔走する。アカデミー賞外国語映画賞に選出された『ビヘイビア』などで知られるキューバを代表する監督エルネスト・ダラナス・セラーノがメガホンを取り、キューバ人俳優トマス・カオ、ヘクター・ノアのほか、『ヘルボーイ』シリーズなどのロン・パールマンらが出演。第7回パナマ国際映画祭で観客賞を受賞したほか、正式出品されたトロント国際映画祭などで高い評価を得た。
 

あらすじ

東西冷戦末期の1991年。ベルリンの壁崩壊が引き金となった社会主義陣営崩壊はソビエト連邦を飲み込み、ソ連の友好国であるキューバ共和国はその余波の煽りで深刻な経済危機に苦しんでいた。モスクワの大学でマルクス主義哲学を修め、大学で教鞭を執るエリート共産主義者セルジオも生活苦にあえいでいたが、ある日、宇宙からの無線を受信する。それは、ソ連が誇る国際宇宙ステーション「ミール」に長期滞在中の宇宙飛行士セルゲイからだった。彼らは無線での交信を通じて友情を育むが、ソ連の崩壊によってセルゲイが帰還無期限延長を言い渡されたことを知ったセルジオは...
 

かんそう

2005年の「NO BORDER」というキャッチフレーズが印象的な、日清カップヌードルのCMを覚えているだろうか。国際宇宙ステーションから地球を眺めていた宇宙飛行士が、“最後のソビエト連邦国民”と呼ばれたセルゲイ・クリカレフだ。1991年、ミール宇宙ステーション滞在中にソ連が崩壊し、帰るべき国を失ってしまう。帰還無期限延長を宣告されたセルゲイ・クリカレフは、孤独を紛らわせるように地球に向かって無線交信していた。そのエピソードを元に、キューバのエルネスト・ダラナス・セラーノ監督が、生活苦ながら家族と幸せに過ごした1991年当時の自分をセルジオに投影させながら脚本を書いたのそうだ。キューバと言えば『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』の舞台だが、1991年は冷戦末期、社会主義崩壊の危機が暗い影を落とし、経済危機に瀕していた時代である。しかしそこに暮らす人々の表情に悲愴感はなく、陽気なキューバ音楽、ユーモアと風刺に彩られた実にかわいらしい作品であった。語源が同じセルジオとセルゲイの友情が…微笑ま…し……く……スヤァ……ハッ!!……スヤァ(断末魔)淡々とした日常の描写が続き、物語にドラマが少ないので、その日の午前中大掃除に取り組んだという肉体的ハンデもあり、敢え無く睡魔に襲われ、おそらく一番肝心なシーンを見逃した(てへ)。思うに、全てにおいてイマイチ求心力に欠けるのだろうと思われる。気が付いたらセルゲイがコカ・コーラを片手に微笑んでいた。その姿は笑いを誘うが、彼自身のアイデンティティやその背景を思うと切ない。キューブリックの「2001年宇宙の旅」を思い出させる壮大な「美しく青きドナウ」になんとなく感動してみたりして、1800円分良い映画だったんじゃないかなって思いたい。