銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】ルージュの手紙

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劇場で観た映画を適当に紹介するシリーズ’17-77
ルージュの手紙』(2016年 フランス)
 

うんちく

フランスを代表する大女優カトリーヌ・ドヌーヴと『偉大なるマルグリット』『大統領の料理人』などのベテラン女優カトリーヌ・フロが初共演した人間ドラマ。対照的な生き方をしてきた血のつながらない母娘が30年ぶりの再会を果たし、互いの人生を交錯させながら変化していく様子を描く。『ヴィオレット ある作家の肖像』『セラフィーヌの庭』などのマルタン・プロヴォが監督を務め、『息子のまなざし』などのオリヴィエ・グルメらが共演している。
 

あらすじ

パリ郊外で助産婦として働きながら、女手ひとつで息子を育てあげてきたクレール。そんな彼女のもとに、30年前に行方がわからなくなった継母のベアトリスから連絡が入る。二人は再会するが、ベアトリスに捨てられたことに傷付き自殺をしてしまった父を思うクレールは、彼女を憎んでいた。自己中心的で自由奔放なベアトリスと、ストイックで真面目すぎるクレール。まるで正反対の二人だったが、反発を繰り返しながらもお互いを放っておくことができず.....。
 

かんそう

映画における映像の画質やトーンは質感を左右し、とても重要だと思う。日本映画はその点において、作り込みが甘いと常々思っている。この作品もそのきらいがあり、日本映画のようなのっぺりとした質感が好きになれなかった。あと、やっぱり邦題が超絶ダサい。と、やや不安を覚えながらの観賞だったが、御年74歳カトリーヌ・ドヌーヴの貫禄とカトリーヌ・フロの演技に引き込まれ、結果感動した。Wカトリーヌによる、血が繋がらない親子の物語が心に沁みる。かつて共に愛したもの、その思い出や痛みを分かち合う。裏切りと憎しみ、その赦しの果てに生まれる絆は血よりも濃い。おそらくメタファーとして繰り返し映し出されるリアルな出産シーンに度肝を抜かれるが、やや難しいテーマながら軽やかにユーモラスに描かれており、清々しい。それにしても、決して二枚目とは言い難いオリヴィエ・グルメがいい男を演じており、年を重ねていたずらに頑なになった心をじんわりと溶かされたいものである。である。