銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】オーケストラ・クラス

劇場で観た映画を適当に紹介するシリーズ’18-56
オーケストラ・クラス』(2017年 フランス)

うんちく

フランスで2000人以上が体験し、マクロン仏大統領やメルケル独首相も現場に訪問するなど、大きな話題になった音楽教育プロジェクト「Démos(デモス)」。音楽に触れる機会の少ない子供たちに無料で楽器を贈呈し、プロの音楽家が音楽の技術と素晴しさを教えるこの情操教育プログラムに着想を得て描かれた人間ドラマ。挫折したバイオリニストが、初めて音楽に触れる子供達と演奏会を目指して交流するさまを活写する。『コーラス』など音楽映画の名作をプロデュースしてきたニコラ・モヴェルネが製作、これが長編2作目となるラシド・アミが監督を務めた。『マイ・ファミリー/遠い絆』などのカド・メラッド、『カミーユ、恋はふたたび』などのサミール・ゲスミらが出演している。

あらすじ

パリ19区。音楽教育プログラムの講師として小学校にやってきたバイオリニストのシモンは、楽器に触れたこともない6年生の生徒たちにバイオリンを指導することになる。音楽家として行き詰まりを感じているだけでなく、気難しく子供が苦手な彼は、やんちゃな子供たちに手を焼き自信喪失してしまう。しかし、クラスの中でひとり、バイオリンの才能と音楽への興味を持っているアーノルドとの出会いによって、シモンの心境に変化が起き始める。そして、アーノルドに影響された子供たちは次第に音楽の魅力に気付き始め、演奏することに夢中になっていくが...

かんそう

シモンが派遣された小学校がある19区について調べてみた。旅行者は特別な用事がない限り避けるべきだと書いてあった。中国系移民出身者と北アフリカ系移民出身者コミュニティ間の抗争があり、また不良集団のシマ争いも激しいそうだ。暴走族の動画を見たが、ハコ乗りするのは日本と一緒なのね。と、そのように治安の良くない地域の子どもたちである。やんちゃにも程がある、というくらい手に負えない悪ガキ揃いで思わずシモンに同情するのだが、ちょっとぽっちゃりアーノルドがかわいい。オーケストラ・クラスが気になって、窓の外に張り付いている様子に心を鷲掴みにされた・・・。もうちょっと丁寧に作り込んだほうが良かったのではと思うディティールやエピソードもあり、飛び石のような展開で駆け足感が否めない。そんなに上達するもんかいなとツッコミを入れたくなるアテレコにムムムとなったりもする。が、そもそも子どもが苦手で、個人的な問題を抱えているシモンが、それぞれの背景を持つ様々な人種の子どもたちと音楽を通じて交流するうちに、少しずつ自分を変化させ、心を解放していく。愛に溢れ、美しいパリの夕暮れが印象的に残る、素敵な映画であった。アーノルドに好意を寄せているらしいヤエルが素敵な女の子なんだけど、私も「君のことが好きだから」って軽やかに言える女の子に生まれたかった・・・。来世はそのように生まれてこよう・・・。