銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】エンジェル、見えない恋人

劇場で観た映画を適当に紹介するシリーズ’18-67
エンジェル、見えない恋人』(2016年 ベルギー)

 

うんちく

トト・ザ・ヒーロー』『ミスター・ノーバディ』などで知られるベルギーの名監督ジャコ・ヴァン・ドルマルが製作に名を連ねるラブロマンス。俳優としてドルマル作品に出演し、短編やテレビシリーズを手掛けてきたハリー・クレフェンが監督を務め、姿が見えない男の子と、目が見えない女の子の恋の物語が綴られる。主演はこれが長編映画デビューとなる新星フルール・ジフリエ。『わたしたちの宣戦布告』『愛・アマチュア』などのエリナ・レーヴェンソンが共演する。
 

あらすじ

マジシャンの恋人に突然捨てられ、心を病んでしまったルイーズは、収容された精神病院で人知れず男の子を出産する。エンジェルと名付けられたその赤ん坊は、人の目に見えない特異体質だった。施設の中でひっそりと育てられたエンジェルは、母ルイーズから自分の存在を誰にも明かしてはいけないと言われていたが、外の世界で知り合った盲目の少女マドレーヌと恋に落ちてしまう。エンジェルの秘密に気付くことなく成長したマドレーヌは、視力を取り戻すための手術を受けることになり...
 

かんそう

ベルギーといえば、ビール、ワッフル、チョコレート。とりわけベルギービールは大好物である。もともと酒に弱い私がビールを飲めるようになったきっかけは、私と対照的に呑兵衛の姉からハモニカ横丁で飲まされた「ヒューガルデン」である。ヒューガルデンと仲良くしたい一心で努力を重ね、根性でビールへの耐性を身につけたのである。それが今となっては「I ♡ Guinness」って黒々しい1パイントグラスをインスタ投稿するようなクズになったわけであるが、今でも白い恋人ヒューガルデンを愛している。前置きが長くなったが、そんなベルギーの至宝と呼ばれているジャコ・ヴァン・ドルマル監督が製作を務めた本作、見えないはずの存在を生々しく感じさせる演出は秀逸。3人の女優が幼少期、思春期、成人のマドレーヌを演じているが、それぞれの美しい佇まいが作品に透明感をもたらし、純愛を際立たせる。目が見えないからこそ認識できていた存在が、目が見えるようになったことによって見えなくなる皮肉。二人のあいだに生まれる葛藤が切ない。ロマンチックで官能的なファンタジーだ。が、黒々しい1パイントを飲み干すようになった私は、透明とは言え生活費どうしてるんだと経済面が心配になったり、食べたものは体内でどうなるんだとか全裸で寒くないのかとか裸足で怪我するだろとか、頭からペンキかけてみたい衝動にかられたり、頭のなかが邪念でいっぱいになったのであった・・・。