銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】メアリーの総て

 
劇場で観た映画を適当に紹介するシリーズ’18-85
『メアリーの総て』(2017年 イギリス,ルクセンブルク,アメリカ)
 

うんちく

ゴシック小説の金字塔「フランケンシュタイン」誕生から200年、原作者メアリー・シェリーの波乱に満ちた人生を、エル・ファニング主演で映画化。監督は『少女は自転車にのって』が第86回アカデミー外国語映画賞にノミネートされた、サウジアラビア初の女性映画監督ハイファ・アル=マンスール。『ゴッホ 最期の手紙』などのダグラス・ブース、『パイレーツ・ロック』などのトム・スターリッジ、『マイ・プレシャス・リスト』などのベル・パウリーらが共演している。
 

あらすじ

19世紀、イギリス。無神論者でアナキズムの先駆者である父親の教育、フェミニズムの先駆者である母親の存在から影響を受け、小説家を夢見ているメアリーは、”異端の天才詩人”と噂されるパーシー・シェリーと出会う。二人は互いの才能に強く惹かれ合うが、パーシーには妻子がいた。家族の反対を押し切り、情熱に身を任せて駆け落ちした二人だったが、メアリーは数々の悲劇に見舞われてしまう。失意のなか、夫と義妹とともに滞在していた詩人バイロン卿の別荘で、怪奇談を披露しあうことになり...
 

かんそう

パーシー・シェリー、パッと見は王子キャラなのに、二度見したら青ヒゲ濃い!バイロン卿もめっちゃキャラ濃い!と、そんなことばかりに気を取られがちだったが、ゴシック小説の古典的名作「フランケンシュタイン」が誕生した背景は実に興味深く、反骨心と知性を併せ持ち、数奇な運命に翻弄され続けたメアリー・シェリーを体現したエル・ファニングが見事だった。本作では、1816年夏のレマン湖畔、文学史に残る伝説の一夜「ディオダティ荘の怪奇談義」が再現されている。嵐の夜に暇を持て余して「怪談しようぜ!」っていうのが『フランケンシュタイン』『吸血鬼ドラキュラ』という歴史に残る二大怪物誕生のきっかけとなったのだから、「ディオダティ荘」とはすなわち「トキワ荘」である。ちなみに『吸血鬼ドラキュラ』の著者ジョン・ポリドリ医師を演じたのは、『ボヘミアン・ラプソディ』でロジャー・テイラーを演じたベン・ハーディ。なかなか報われない気の毒な役柄であったが、こっちは「あ、ロジャーじゃん!」って気が気でなくなるしな。って、そんなことはどうでもいい。「フランケンシュタイン」を書き上げたときメアリーが弱冠18歳だったということにも驚かされるが、家庭ではソリの合わない継母に抑圧され、才能はあるけど生活力のない妻子ある詩人と駆け落ちするも、自由恋愛を掲げてヨメの義妹にも手を出すクズ夫に翻弄されつつ借金まみれ、産まれてきたばかりの我が子を失い・・・と、ここまでが18歳なのである。そりゃ悲しみの淵からモンスター生まれるわ。エル・ファニングもまだ20歳であることに気付いて、ぼんやり生きててすみませんという気持ちになっている。