銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】マダムのおかしな晩餐会

 
劇場で観た映画を適当に紹介するシリーズ’18-83
『マダムのおかしな晩餐会』(2016年 フランス)
 

うんちく

身分を隠して晩餐会に出席したメイドが、客の紳士に一目ぼれされることから騒動が起こるラブコメディ。『リトル・ミス・サンシャイン』などのオスカー女優トニ・コレット、『レザボア・ドッグス』などの名優ハーベイ・カイテルペドロ・アルモドバル監督作品の常連ロッシ・デ・パルマ、ドラマ『女王ヴィクトリア 愛に生きる』などのトム・ヒューズら、個性的なキャストが顔をそろえる。監督は新鋭アマンダ・ステール。
 

あらすじ

パリに引っ越してきた裕福なアメリカ人夫婦アンとボブは、セレブの友人たちを招いて晩餐会を開こうとするが、急にやってきたボブの息子が加わり、招待客の数が不吉な13人になってしまう。アンは急きょスペイン人メイドのマリアを「ミステリアスなレディ」に仕立て上げ、晩餐会に同席させることに。緊張のあまりワインを飲みすぎたマリアは下品なジョークを連発するが、場違いなはずの彼女がなぜか英国紳士に気に入られてしまい...
 

かんそう

ブルジョワジーが移民を見下しているだけの、なんとも胸糞が悪くなる悪趣味な映画だった。振り返り、観るんじゃなかったと思っている。この作品で誰が喜ぶのか分からないし、日本にこの映画を持ち込んだ配給会社は何を考えているのだろうと怒りにも似た感情が湧いてくるが、ただ、これが現実なのだろう。監督は今そこにある世界のリアルを切り取ったに過ぎないのだ。これが虚飾と欺瞞に満ちたブルジョワジーへの壮大な皮肉だと考えると、なるほどと腹落ちする。これは、格差社会や人種差別の不条理を描いたブラックユーモアなのだ。全体を覆うコミカルな雰囲気とは程遠い、ブルジョワジーによる差別と偏見がこもった台詞の応酬は毒気にあてられてしまうが、そのアンバランスさがかえって彼らの不愉快な人間性を際立たせる。まともな人間は、本当の幸せや豊かさが何かを知っているメイドたちだけだ。おそらくは金目当てで年の離れたセレブと結婚し、パリの社交界で見栄を張りながら生きている物質主義のアメリカ女を嫌味たっぷりに演じきったトニ・コレットは、やっぱり素晴らしい俳優だということだ。だけどな、おいら、ロマンチックコメディという触れ込みを信じて、ひたすら楽しい気持ちになりたくて映画館に行っただよ。こりゃ全然ロマンチックコメディじゃないべ?配給会社はギルティ。あの日の私に謝りなさい。颯爽と歩き出すマリアの未来が、ハッピーエンドだったと信じたい。