或る映画凝屋の手記

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】歓びのトスカーナ

劇場で観た映画を適当に紹介するシリーズ’17-38
歓びのトスカーナ』(2016年 イタリア,フランス)
 

うんちく

『人間の値打ち』で絶賛を博したイタリアの名匠パオロ・ヴィルズィ監督が、トスカーナ地方の美しい自然と街並みを背景に、人生を踏み外し社会のアウトサイダーとなってしまった女性たちが自由を追い求める姿を描いた人間讃歌。主演は『ハッピーイヤーズ』などのミカエラ・ラマッツォッティと、『ぼくを葬る』『アスファルト』のヴァレリア・ブルーニ・テデスキダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞(イタリアアカデミー賞)17部門ノミネート、作品賞・監督賞・主演女優賞を含む5部門受賞。
 

あらすじ

イタリア・トスカーナ州の緑豊かな丘の上にある診療施設、ヴォラ・ビオンディ。ここでは心にさまざまな問題を抱えた女性たちが、社会に復帰するための治療を受けている。この施設で女王のごとくふるまう”自称伯爵夫人”ベアトリーチェは、極度の虚言癖があり、嵐のごときハイテンションで周囲の人々を引っ掻き回す存在だが、ある日、痩せ細った身体のあちこちにタトゥーが刻まれた新参者のドナテッラに興味を持つ。ルームメイトになったふたりは施設を抜け出し、行き当たりばったりの逃避行で絆を深めていく。ベアトリーチェは、過去のトラウマから鬱々と自分の殻に閉じこもるドナテッラを救い出そうとするのだが….
 

かんそう

この手のヨーロッパ映画は当たり外れがあるし、観るか観まいかと少し迷って、半信半疑で観に行った。イタリア好きを狙ったような的外れな邦題が残念。原題の"La pazza gioia”は直訳すると「狂気的な歓び」、所謂「お祭り騒ぎ」のことらしい。描かれるのは「幸せをほんの少し」探し求める、心が壊れてしまった女性たちの逃避行だ。少しずつ断片的に明らかになる、過去の傷。彼女たちが狂気に至るまで、愛されなかった過去、受け入れられなかった愛について、語りすぎない程よい匙加減で、それでいて丁寧に描かれていて見事。「言葉はいつも見当違いで滑稽だ」というドナテッラの言葉。人生はあまりにも切なく痛々しく、なんと滑稽で愛おしいものであろうかと。絶望から希望へと生まれ変わるように海の泡と戯れるドナテッラの姿を眺めながら、気が付いたら泣いていた。騒々しくまくしたてる迫力のイタリア語に圧倒されつつ、それでも憎めないベアトリーチェを演じきったヴァレリア・ブルーニ・テデスキが素晴らしかったし、個人的には、あ、薬切れた、っていう瞬間の演技がツボであった。思いがけず、心に染みる傑作。