銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】ジュディ 虹の彼方に

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映画日誌’20-14:ジュディ 虹の彼方に

introduction:

オズの魔法使』『スタア誕生』で知られる女優・歌手のジュディ・ガーランドの伝記映画。47歳の若さで急逝する半年前の1968年冬に行ったロンドン公演の日々を映し出す。監督は『トゥルー・ストーリー』などのルパート・グールド。『ブリジット・ジョーンズの日記』『シカゴ』などのレネー・ゼルウィガーがジュディを演じ、吹き替えなしで全曲を自ら歌い上げ、第92回アカデミー賞で主演女優賞、第77回ゴールデン・グローブ賞で女優賞に輝いた。『マネー・ショート 華麗なる大逆転』のフィン・ウィットロック、『ヘラクレス』のルーファス・シーウェル、『ハリー・ポッター』シリーズのマイケル・ガンボンなどが共演している。(2019年 アメリカ,イギリス)
 

story:

1968年。かつてはミュージカル映画の大スターとしてハリウッドに君臨したジュディ・ガーランドは、度重なる遅刻や無断欠勤によって映画出演のオファーが途絶え、巡業ショーで生計を立てる日々を送っていた。借金がかさみ、住む家も無い彼女は、幼い子どもたちと幸せに暮らすため、起死回生をかけて5週間にも及ぶロンドン公演を敢行すべく独り旅立つことに。英国での人気は今も健在だったが、それまでの荒んだ生活で精神がボロボロになっていたジュディは、舞台に立つことすら危ぶまれる有様だった...
 

review:

この「虹の彼方に」ってダサい邦題は何なん(真顔)と一瞬思ったが、本作は2005年に初演されたピーター・キルター脚本の舞台劇「エンド・オブ・ザ・レインボー」を原作としているそうなので、「配給会社がつける邦題はダサい」というバイアスで断罪しようとしてゴメンなさいという気持ちになっている。さて、この作品を観るにあたっては、ジュディ・ガーランドの壮絶な生い立ちを知っておいた方が良いだろう。作品では明確に描かれないが、エージェントに言われるがまま、ジュディを覚せい剤漬けにしていたのは実の母親である。また、映画の冒頭で ”You are my favorite” と彼女に囁くMGMスタジオの社長ルイス・B・メイヤーは児童性愛者として有名だった。母親に愛されず、13歳からショービズの世界で食い物にされてきた少女は徐々に精神を病み、生涯にわたって不眠症や不安神経症、アルコールや薬物の深刻な問題を抱えていたという。度々、容姿の劣化について書き立てられてきたけど、ジュディに扮したレネーさんがこれまた老婆のよう・・・!と思ったが、ジュディ・ガーランド本人が、長年の不摂生がたたり47歳で亡くなった時はすでに老女のようだったとのこと。何とも物悲しい。また、ジュディがゲイ・アイコンであることも知っておいたほうがよい。彼女が主人公のドロシーを演じた『オズの魔法使』がLGBTQのマスターピースであることに由来するが(かつてゲイを指す業界隠語で”Friend of Dorothy”というものがあった)、実の父や夫など彼女を取り巻く人々がゲイやバイ・セクシャルだったため、同性愛者への差別が強烈だった時代に、彼らへの理解を示していた稀有な存在だったからでもある。本作にも、ジュディの長年のファンであるゲイ・カップルが登場し、彼らの存在を通してジュディがいかに愛された人であったかが描かれる。典型的な破滅型であるジュディの姿はいかにも痛々しいが、そんな描写のなかにあって、彼らとのふれあいはじんわりと暖かい。実際のジュディの生涯においても、そんなひとときがあったと信じたい。って、ジュディに関する情報を仕入れたのちに思ったんだが、つまりはこの作品、先述の予備知識がないとドラマに奥行きが出ないのである。レネー・ゼルウィガー本人による圧巻のパフォーマンスは見応えあり。要するにレネー・ゼルウィガーがよくがんばった映画。
 

trailer: