銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】ジョジョ・ラビット

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映画日誌’20-06:ジョジョ・ラビット
 

introduction:

マイティ・ソー バトルロイヤル』などで知られるニュージーランド出身のタイカ・ワイティティが、脚本と監督を手掛け、第二次世界大戦時のドイツを舞台に描く人間ドラマ。何か月も続いていたオーディションを一瞬で終わらせたという、ローマン・グリフィン・デイビスが主演を務め、『真珠の耳飾りの少女』などのスカーレット・ヨハンソン、『スリー・ビルボード』などのサム・ロックウェルらが共演。ワイティティ監督自身がヒトラーを演じている。音楽は『カールじいさんの空飛ぶ家』でオスカーに輝いたマイケル・ジアッチーノ。第92回アカデミー賞では、作品賞・助演女優賞の主要2部門をはじめ、脚色賞・編集賞美術賞・衣裳デザイン賞の6部門にノミネートされている。(2019年 ドイツ,アメリカ)
 

story:

第二次世界大戦下のドイツ。母親とふたりで暮らしている10歳のジョジョは、空想上の友達アドルフ・ヒトラーの助けを借りながら、青少年集団ヒトラーユーゲントの立派な兵士になろうと奮闘していた。しかし。心優しい彼は訓練でウサギを殺すことができず、教官から〈ジョジョ・ラビット〉という不名誉なあだ名をつけられ、からかいの対象となってしまう。そんなある日、ジョジョは家の片隅に隠し部屋を見つけ、そこにユダヤ人少女エルサが匿われていることに気付くが...
 

review:

理不尽な戦争への痛烈な風刺を織り交ぜながら、空想上の友人アドルフ・ヒトラーと会話する少年の日常をコミカルに描く。冒頭、ビートルズの名曲『抱きしめたい』のドイツ語バージョンにナチスドイツのプロバガンダ映画の映像を重ね、「ハイル、ヒトラー!」と駆け回るジョジョ少年の姿を軽やかに映し出し、高揚感を煽る。一事が万事、ワイティティ監督の仕事が見事だ。絶望的な状況にあっても、子どもの瞳に映る世界は輝いて希望に満ち、優しさと美しさで縁取られている。そして大人たちは間抜けで滑稽だ。第二次世界大戦下のナチスドイツという重いテーマが、デヴィッド・ボウイトム・ウェイツらの名曲に彩られ、子どもの視点で寓話的に語られる。それは突きつけられる戦争の残酷さとのコントラストを強くし、より一層哀しみを深くさせる。戦禍の中でもおしゃれを楽しみ、ダンスを踊り、豊かで人間らしい暮らしが戻ってくることを願っていたお母さんの素敵な靴。靴紐をうまく結べなかったジョジョ。全てを見ていた家の窓。エルサとの可笑しくも不毛なやりとり。手榴弾や銃を持たされる子ども。キャプテンKの眼差し。一つ一つが脳裏に焼き付いて離れない。ずっとスカーレット・ヨハンソンが苦手だったが、今回初めて好きかもしれないと思ってしまった。戦時下でも潔く自分の信念を貫き、子どもに愛を教える母親役をセクシーに演じたスカーレット・ヨハンソンがべらぼうにカッコいいのだ。そして『リチャード・ジュエル』に続きサム・ロックウェルがまた魅せてくれた。『グリーン・マイル』や『スリー・ビルボード』であんな感じだったのになぁ。どうでもいいけど親友のヨーキーが可愛すぎる。ジョジョよりヨーキー推し。いろんな意味で忘れ難く、心に残る傑作。
 

trailer: