銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】フォードVSフェラーリ

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 映画日誌’20-05:フォードVSフェラーリ

 

introduction:

伝説的な1966年のル・マン24時間耐久レースで、モータースポーツ界の頂点に君臨するイタリアのフェラーリに挑んだフォード・モーター社の男たちを描いた伝記ドラマ。『ボーン』シリーズ、『オデッセイ』などのマット・デイモン、『ダークナイト』シリース、『バイス』などのクリスチャン・ベイルが主演する。『17歳のカルテ』『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』『LOGAN/ローガン』など多彩なジャンルのヒット作を手掛けてきたジェームズ・マンゴールドが監督を務めた。第92回アカデミー賞では、作品賞を筆頭に、音響編集賞、録音賞、編集賞の4部門にノミネートされている。(2019年 アメリカ)
 

story:

元レーサーのカー・デザイナー、キャロル・シェルビーのもとに、フォード・モーター社からル・マン24時間耐久レースでの勝利という信じがたいオファーが届く。それは6連覇中の絶対王者フェラーリを倒すということだった。心臓の病でレース界から身を退いていたシェルビーは、フォード社上層部から反対されながらも、型破りなドライバー、ケン・マイルズをチームに招き入れる。限られた時間と資金の中、開発における技術的なトラブルに止まらず、幾多の困難が彼らを待ち受けていた。それでもレースへの情熱を共有する男たちはいつしか固い絆で結ばれ、決戦の地ル・マンに乗り込んでいくが…
 

review:

激ヤセ激太り歯も抜く…クリスチャン・ベイルはいつだって全力投球!っていう記事を読み耽っていたら電車を乗り過ごして遅刻した。彼の主演デビュー作『太陽の帝国(1987年・スピルバーグ監督)』は、中学生になったばかりの私に衝撃を与え、親の目を盗んで2回映画館で観た。あれ、もしかしたら劇場好きの原体験ってこれか?てか実年齢がバレるよね。そういうわけでクリスチャン・ベイルが出ているとつい見ちゃう病だし、マット・デイモンが出ているとつい見ちゃう病のくせに、本作は何故かスルーしようとしていて、すんでのところで踏み止まった。あぶねー。直球すぎてロマンを感じないタイトルが良くないよと思ったら原題やんか。さて、限られた時間と資金のなかで、危険を冒しながら色んな敵と闘っているスタートアップのみなさんは是非、IMAXで観ましょう。7000回転の世界で唸る轟音に悶絶しながら、人生のすべてを捧げて不屈のプライドを貫き、命を賭して夢を追い求めた男たちのロマンに、どっぷりと浸ることができます。はい。観客を感動と興奮の渦に巻き込み、夢中にさせるという意味では、まさに本物のエンターテイメントだ。マンゴールド監督は、楽天的だったアメリカがシニカルに変化していく1960年代をより正確に映し出し、その瞬間を生きた、情熱的で競争心に溢れた人々のチャレンジを誠実なアプローチで描いている。シェルビーとマイルズの友情、マイルズを支えた妻モリーの愛、大企業同士の確執と社内政治、その全てをシェルビーに託したアイアコッカ。全てにドラマがあり、「素晴らしいものと感情を組み合わせられる監督」と製作のピーター・チャーニンが評しているが、その通りだと思う。ちなみにフォード社が誇る世界最高のマーケティング戦略家のひとり、リー・アイアコッカは、1964年に象徴的なフォード・マスタングを作ったこと、1979年にクライスラーを引き継いで破産から救ったことなど、数々のレガシーが残されているそうだ。業界が生んだ最高のショーマンが、フォードとレーシングを同義語にすべく、この物語を生んだのだ。そのことも記憶しておきたい。
 

trailer: