銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】ジャコメッティ 最後の肖像

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劇場で観た映画を適当に紹介するシリーズ’18-03
ジャコメッティ 最後の肖像』(2017年 イギリス)
 

うんちく

没後50年を過ぎてなお、長く縦に引き延ばされたような人物のブロンズ像が強烈な印象を残す、スイス出身の芸術家アルベルト・ジャコメッティ。彼が最後に手掛けた肖像画のモデルを務めたジェイムズ・ロードの回顧録「ジャコメッティの肖像」をもとに、名脇役として知られるスタンリー・トゥッチが映画化。描くほどに苦悩し暴発する天才の妥協なき精神と、そんな彼に翻弄される周囲の人々の奇妙な人間関係を描く。ジャコメッティを『シャイン』などのオスカー俳優ジェフリー・ラッシュ、ロードを『コードネーム U.N.C.L.E.』などのアーミー・ハマーが演じる。
 

あらすじ

1964年、パリ。アルベルト・ジャコメッティの個展が開かれている。彼の友人であり、アメリカ人の作家で美術評論家のロードは、彼から肖像画のモデルを依頼される。数日後アメリカに帰国予定だったが、巨匠の仕事を間近で見られるチャンスに好奇心を感じだロードは、2日あれば終わるとの言葉を信じてイポリット=マンドロン通り46番地にある巨匠のアトリエへ向かった。しかし、ジャコメッティのスランプや、度重なる愛人カロリーヌの邪魔立てによって、次第に終わりが見えなくなる。18日にも及ぶ地獄のセッションの果てに、肖像画は無事完成するのか……?
 

かんそう

対象の本質を描こうと試行錯誤する天才の苦悩と、それに翻弄される人々の姿が、悲喜こもごも、ユーモラスに描かれる。ジェームスが残した回顧録をもとに、二人が18日間にわたって積み重ねた対話が淡々と描かれる。それはもう、淡々と。抑揚なく。淡々と。それは眠気を誘うほどに。要するに退屈であったのだが、ジャコメッティの創作活動を支える弟のディエゴ、妻のアネット、愛人のカロリーヌ、日本人哲学者の矢内原伊作が織りなす複雑な関係が暴露されており、その点は興味深い。ちなみに18日間しか描かれないのでジャコメッティの人生に迫る伝記映画ではないが、おそらく忠実に再現されたと思われるアトリエの空気感、ジャコメッティの人柄や気質に少しだけ触れることができる。それを体現したジェフリー・ラッシュの演技は一見の価値あり。