銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】2重螺旋の恋人

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劇場で観た映画を適当に紹介するシリーズ’18-55
2重螺旋の恋人』(2017年 フランス)

うんちく

『危険なプロット』『17歳』などで知られ、フランスを代表する鬼才フランソワ・オゾンが、4年の構想期間を経て放つ心理サスペンス。双子の精神分析医のポールとルイという、2人の男性と禁断の関係に溺れていく女性が迎える、驚くべき結末をスリリングに描き出す。主演は『17歳』で鮮烈な印象を残したマリーヌ・ヴァクト。同じくオゾン監督作品『クリミナル・ラヴァーズ』『しあわせの雨傘』に出演したジェレミー・レニエが双子の精神分析医を演じる。ほか、ジャクリーン・ビセットらが共演。

あらすじ

原因不明の腹痛に悩まされるクロエは、精神分析医ポールのカウンセリングを受けることによって痛みから解放される。やがて2人は恋に落ち、一緒に暮らし始めるが、そんなある日、クロエは街でポールそっくりの男を見かける。彼はポールの双子の兄で精神分析医のルイだった。ポールからルイの存在を聞かされていなかったクロエは疑惑にかられ、真相を確かめるため偽名を使ってルイのクリニックに通い始る。診察を受けるうちに、優しいポールとは違って傲慢で挑発的なルイに惹きつけられていくが...

かんそう

「『2重螺旋の恋人』は本質的には精神的な物語を描いていますが、演出は建築的な構成で、シンメトリー、 反映、幾何学的なものを作用させ、美術も脳が考えを作り上げるように、何かが作り上げられて行く印象を与えるようにしています。」オゾン監督かく語りき。原因不明の腹痛、双子の精神分析医、螺旋階段、鏡、どこか怪しげな隣人、猫のモチーフ、恋人の過去、クロエが勤める美術館のインスタレーションが彼女の不安定な心象を表したようにグロテスクに変化していくさま。幻想的で美しい映像、巧みな演出と構成。それらが絡み合い、極上のサスペンスを生み出していく。最後まで強く惹きつけられて目が離せない。妄想と現実の境目が分からないまま、散りばめられた謎が謎を呼び、すべてが曖昧なまま迷宮に置き去りにされてしまう。観る者を手玉に取りながら幻惑の袋小路に追い立てるべく、ほくそ笑みながら作ったんだろうなぁ。ああ、なんだか悔しい。まんまとフランソワおじさんの罠に嵌ってしまった。もう一度見直して、謎解きしたい。近年のオゾン作品の中でも卓越した傑作ではないだろうか。作家性と娯楽性を両立させる鬼才の手腕に酔い痴れた。そしてなんと言っても、オゾンの世界を体現してみせた主演のマリーヌ・ヴァクトが実に美しく、素晴らしかった。で、ジェレミー・レニエ扮するポールとルイ、メガネ男子フェチとしてはポール派。(どうでもいい