銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】ドント・ウォーリー

劇場で観た映画を適当に紹介するシリーズ’19-30
『ドント・ウォーリー』(2018年 アメリカ)
 

うんちく

事故により四肢麻痺になった風刺漫画家ジョン・キャラハンの半生に魅せられ、自伝” Don’t Worry, He Won’t Get Far on Foot”の映画化権を獲得していた俳優のロビン・ウィリアムズ。『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』公開当時から相談を受けていたガス・ヴァン・サント監督が彼の遺志を継ぎ、脚本を執筆。企画から20年の時を経て完成させた人間賛歌。キャラハン役を『ザ・マスター』などの実力派俳優ホアキン・フェニックスが演じ、ルーニー・マーラ、、ジョナ・ヒルジャック・ブラックらが共演。2018年サンダンス映画祭、第68回ベルリン国際映画祭コンペティション部門出品。
 

あらすじ

オレゴン州ポートランド。アルコールに溺れる日々を暮らしていたジョン・キャラハンは、自動車事故によって脊髄を損傷し、胸から下が麻痺してしまう。車いす生活を余儀なくされたジョンは人生に絶望し、ますます酒に溺れ自暴自棄な生活を送っていたが、ある幾つかのきっかけによって自分を憐れむことを止め、過去から自由になる強さを身につけていく。そして持ち前の辛辣なユーモアを発揮し、不自由な手で風刺漫画を描き始める。
 

かんそう

ジグソーパズルのピースをひとつずつ埋めていくような、ガス・ヴァン・サントらしい語り口で、たまに、冗長やねん・・・睡魔来るやん?と今回も思ったけど、しかしやはり、ガス・ヴァン・サントガス・ヴァン・サントたる所以はその冗長な語り口によるものだろう(褒めてない)。とは言え、美しい映像で綴るジョン・キャラハンの強烈な半生、総じて面白かった。ポートランドの街を、赤い髪をなびかせ猛スピードで車いすを走らせていたという風刺漫画家ジョン・キャラハンは、21歳の時に事故に遭い、車いす生活が始まる。27歳の時に禁酒。って、ホアキンおじさんに21歳を演じさせるのは無茶だなー。それにつけても、ルーニー・マーラのかわいらしさよ。地上に降りた天使か。そしてぽっちゃり俳優ジョナ・ヒルが、綺麗な生き物になってた。絶望の淵で苛立ちと怒りにまみれていたジョンは、ジョナ・ヒル演じる友人ドニーの導きによって、ルーニー・マーラ演じる恋人アヌーの支えによって、自らの過去と向き合いトラウマから自己を解放していく。その心の旅に寄り添い、我々も奇跡を目撃する。素敵な映画体験だった。「匿名のアルコール依存症者たち」という意味を持つアルコホーリク・アノニマス(AA)は、一人のアルコホーリクが、もう一人のアルコホーリクにお互いの飲酒の問題について経験を分かち合い、飲酒のために混乱した病的な感情を整理し、人間関係を修復しながら、一人の人間として成長していくことを目指したプログラムだ。無力であることの認知、自覚、原因と欠点の追及、対象者の選別、対象者への贖罪と自己への赦しへとつながっていく。この「12のプログラム」の流れを知っておくと、作品をより理解しやすくなるのではないかと思う。