銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】おかえり、ブルゴーニュへ

劇場で観た映画を適当に紹介するシリーズ’18-76
『おかえり、ブルゴーニュへ』(2017年 フランス)
 

うんちく

フランス・ブルゴーニュを舞台に、ワイン醸造家だった父親の死をきっかけに10年ぶりに再会した三兄妹の悲喜こもごもが描かれる人間ドラマ。『スパニッシュ・アパートメント』『ロシアン・ドールズ』『ニューヨークの巴里夫(パリジャン)』からなる〝青春三部作″で知られ、現代フランスを代表する人気監督セドリック・クラピッシュがメガホンを取り、『理想の出産』などのピオ・マルマイ、『FOUJITA』などのアナ・ジラルド、『FRANK -フランク-』などのフランソワ・シヴィルらが出演。
 

あらすじ

フランス・ブルゴーニュ地方のワイン生産者・ドメーヌの長男ジャンは、世界を旅するため故郷を飛び出し家族とは音信不通だったが、父親が末期の状態であることを知り、10年ぶりに故郷ブルゴーニュへと戻ってくる。家業を受け継ぐ妹のジュリエット、別のドメーヌの婿養子となった弟のジェレミーと久しぶりの再会を果たすも、間も無く父親が亡くなってしまう。残された葡萄畑や相続をめぐって、さまざまな課題に直面するなか、父親が亡くなってから初めての収穫期を迎える。3人は自分たちなりのワインを造るため協力し合うが、その一方で、それぞれが互いに打ち明けられない悩みや問題を抱えていた…。
 

かんそう

フランス・ブルゴーニュ地方でドメーヌを営む家族の自立と再生の物語である。ドメーヌとは、自らブドウ畑を所有し(畑の賃借も含む)、栽培・醸造・瓶詰を一貫して行うブルゴーニュ地方のワイン生産者のこと。この手の作品は当たり外れがあるが、期待していたよりずっと面白かった。ややシリアスなテーマを扱いつつ、程よくユーモアを散りばめた脚本と演出で楽しめたし、ブルゴーニュの美しい田園風景を舞台にワインの製造過程を辿りながら物語が展開するので、ワイン造りを体験しているようで実に興味深い。親子、兄弟、夫婦の関係がワインのように醸成されていくさま、何よりこの家族がどれほどワインと家族を愛しているのか伝わってきて、共感とともに深く沁み入る。心が行き届いた、よく出来た作品という印象だ。ちなみにブルゴーニュワインを日本に紹介したのは、私の知人のおじさんである。噂では、ブルゴーニュ地方にシャトー(城)をお持ちとのこと。業界では非常によく知られた方で、一度ワイン業界の人に「甥を知ってる」と言ったら、飛び上がらんばかりに驚かれた。いや、直接は一ミリも接点ないからね?よく聞いて?なお、その甥っ子は、見知らぬ人に「格闘家ですか?」と声をかけられるくらいに野生児であるが、随所に隠しきれない育ちの良さが滲み出ている。ワインも人も、どんな風に熟成されようとその素性と生い立ちが礎となる、といういい見本なのであった・・・。