銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】ビューティフル・ボーイ

劇場で観た映画を適当に紹介するシリーズ’19-26
『ビューティフル・ボーイ』(2018年 アメリカ)
 

うんちく

ドラッグ依存の息子とその父親が、それぞれの視点から綴った2冊のノンフィクションを原作に、家族の愛と再生を描いたドラマ。『君の名前で僕を呼んで』で世界中を魅了したティモシー・シャラメと、『フォックスキャッチャー』などのスティーブ・カレルが主演。『オーバー・ザ・ブルースカイ』でアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされたフェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲンが監督を務め、『ムーンライト』『それでも夜は明ける』など上質なドラマを生み出し続ける、ブラッド・ピット率いるプランBエンターテインメントが製作を手掛けた。
 

あらすじ

フリーで音楽ライターをしているデヴィッド、その息子ニックは、優等生でスポーツ万能。才能豊かな学生として周囲から将来を期待されていたが、同時に彼にとってそれは重圧でもあった。義理の母親、幼い弟たちにとって“いい息子、いい兄”であることが常に求められることに疲れを感じ、軽い出来心から手を出してしまったドラッグにのめり込んでしまう。それに気付いた父デヴィッドは心を痛めながら、彼を更生施設に連れて行く。誰よりも父に自分のことを”誇りに思ってほしい"と願うニック、何度裏切られても息子を信じ続けるデヴィッド。それでもニックは依存症の再発を繰り返し、ドラッグを断ち切ることが出来ずにいた...
 

かんそう

『ビューティフル・ボーイ』というタイトル通り、ティモシー・シャラメの美しさをひたすらに堪能するための作品である。ちなみにタイトルはジョン・レノンオノ・ヨーコが1980年に発表したアルバム『ダブル・ファンタジー』の収録曲「ビューティフル・ボーイ」から。そしてジョン・レノンの生前最期のロングインタビューを行ったのが、この物語の「父」である音楽ライターのデヴィッドとのことだ。この父デヴィッドが依存症の息子に寄り添い続けた日々を書き記した手記と、8年という長い歳月をかけてドラッグ依存を克服し、現在はNetflixの人気ドラマ「13の理由」の脚本家として活躍する息子ニックの視点で綴られた手記。この2つの回顧録はいずれも絶賛されアメリカでベストセラーとなった。この異なる2つの視点をひとつに統合し、それぞれの思いが幾重にも折り重なる珠玉のドラマに仕立てたヒュルーニンゲン監督の仕事が素晴らしい。作り物ではない筋書きが実にリアルで、時に残酷だ。痛ましいまでに率直に、且つ克明に描かれる親子の苦悩と葛藤を体現した、スティーヴ・カレルティモシー・シャラメの演技が見事である。それにしてもブラピ率いるPlan Bは良い映画作るなぁ。大手が尻込みして手を出さないようなテーマや企画に真正面から取り組み、世間に迎合しない姿勢が素晴らしい。今のところ『ムーンライト』のみだが、Plan Bで製作してA24で配給して。もっとして。