銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】バトル・オブ・ザ・セクシーズ

劇場で観た映画を適当に紹介するシリーズ’18-46
 

うんちく

1970年代、絶対王者として女子テニス界に君臨し、男性優位の不平等と闘い続けたビリー・ジーン・キングを描いたドラマ。アカデミー賞4部門にノミネートされた『リトル・ミス・サンシャイン』のヴァレリー・ファリス&ジョナサン・デイトンが監督を努め、『スラムドッグ$ミリオネア』でアカデミー賞を受賞したダニー・ボイルサイモン・ボーフォイが再び手を組み、それぞれ製作と脚本を手掛ける。『ラ・ラ・ランド』などのエマ・ストーン、『フォックスキャッチャー』などのスティーヴ・カレル、『インデペンデンス・デイ』シリーズなどのビル・プルマンらが出演。
 

あらすじ

1973年、全米女子テニスチャンピオンのビリー・ジーン・キングは、女子選手の優勝賞金が男子選手の8分の1であることなど男性優位主義に抗議。男女平等を求めて仲間とともにテニス協会を脱退し、女子選手の地位向上を掲げた女子テニス協会を立ち上げる。著名なジャーナリストで友人のグラディス・ヘルドマンがスポンサーを見つけ出し、女子だけの選手権の開催が決まると自分たちでチケットを売り、宣伝活動に励んでいた。そんなビリー・ジーンに、かつての世界王者ボビー・リッグスが男性優位主義代表として挑戦状を叩きつけてくるが...
 

かんそう

リトル・ミス・サンシャイン』などのジョナサン・デイトンヴァレリー・ファリス夫妻が監督、ダニー・ボイルが製作と聞けば観に行くほかあるまい。『ラ・ラ・ランド』を評価せず、同作におけるエマ・ストーンの魅力が理解できない私であるが、しかしエマ・ストーンは作品を選べば非常に優れた俳優であるし、チャーミングな女性である。本作のエマ・ストーンは見事なハマり役で素晴らしかった。そんなエマが演じたビリー・ジーン・キングとは、圧倒的な強さを誇ったテニスプレイヤーで、タイム社による「20世紀における最も重要なアメリカ人100人」に名を連ねる人物である。ビリー・ジーン・キング・イニシアティブの創設者で、ワールド・チーム・テニスの共同創設者。長きにわたり、社会変革と平等を求めて戦っている。行政の援助が行き届かない人々への支援を生涯の使命とし、HIV感染者へのプログラムと財政的支援を、エルトン・ジョンエイズ基金と共に行っているそうだ。私生活では、恋愛結婚した理解ある夫ラリーがいたが、その後レズビアンであることを公表している。作中では、最初の女性の恋人であるマリリンにどうしようもなく惹かれ、揺れ動く様子をエマ・ストーンが繊細に演じているほか、対戦相手であるボビー・リッグスの複雑な背景も丁寧に描き出されており、作品に奥行きを出している。程よくユーモアを散りばめつつ所々に哀愁を漂わせる演出、1970年代の衣装や調度品に彩られた映像がスタイリッシュで素敵だ。全体を通してテンポの良い描写が続き、テニス対決シーンもあっさり描かれるのでそこを楽しみに観た人には期待はずれのようだが、ビリー・ジーンにとってボビーとの対決は、人生をかけた長い闘いの序章に過ぎないのである。それにしても、スティーヴ・カレルが実際のボビー・リッグスが生き写し。エンドロールで確認しよう。