銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】告白小説、その結末

劇場で観た映画を適当に紹介するシリーズ’18-45
告白小説、その結末』(2017年 フランス,ベルギー,ポーランド)
 

うんちく

『反撥』『ローズマリーの赤ちゃん』『戦場のピアニスト』など、センセーショナルな作品で知られる巨匠ロマン・ポランスキーが、フランスで今もっとも注目されている作家デルフィーヌ・ド・ヴィガンの小説「デルフィーヌの友情」を映像化。スランプに陥った人気作家と熱狂的な読者という、ふたりの女性がたどる運命をスリリングに映し出す。出演は、ポランスキー監督作『毛皮のヴィーナス』でセザール賞主演女優賞にノミネートされたエマニュエル・セニエ、『007/カジノ・ロワイヤル』などのエヴァ・グリーン、『ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ』などのヴァンサン・ペレーズら。『夏時間の庭』のオリヴィエ・アサイヤス監督が、ポランスキーと共同脚本を務めた。
 

あらすじ

精神を病んで自殺した母親と暮らした日々を綴った私小説がベストセラーとなったものの、その後スランプに陥ってしまった作家デルフィーヌ。ある日、彼女の前に熱狂的なファンだと名乗る美しく聡明な女性エルが現れる。差出人不明の脅迫状に苦しめられていたデルフィーヌは、献身的に支えてくれる彼女に信頼を寄せていく。まもなく二人は共同生活を始めるが、時折ヒステリックに豹変するエルの不可解な言動にデルフィーヌが翻弄されるようになる。やがてエルの壮絶な身の上話に衝撃を受けたデルフィーヌは、彼女を題材に小説を執筆しようとするが…。
 

かんそう

ポランスキーホドロフスキーイーストウッドなど80代になっても精力的に作品を撮り続ける映画監督は多い。彼らの感性は瑞々しく、その作品は生命力に溢れ、観る者を圧倒する。おっさんが迫害される昨今だが、おっさんをおっさんたらしめているのは、他でもないおっさん自身の感性なので年齢を言い訳にしてはいけない。さて、御年84歳のロマン・ポランスキー先生の新作、どんな感想書いてもネタバレになるやんか…。もう何にも書けへんやんか…。とりあえず、単なるサスペンスという軸で評価するとまったく的外れになる。ポランスキーの作家性を語るにあたっては壮絶な彼の半生について知っておいたほうがいいが、あまりにも衝撃的なので詳細はGoogle先生に尋ねていただきたい。忌まわしい、その数奇な運命が彼にもたらしたもの。彼の目に世界がどう映っているのかなんて、まるで想像がつかない。ただ、ポランスキーの作品が倒錯的で妖しく不穏な空気をまとい、我々を魅了するのは仕方のないことだと思わずにいられないのだ。仕組まれたメタフィジカルな伏線は、観客の感情を逆撫でし、不安を煽る。これでもかと見せつけられる違和感から覚える苛立ちと歯がゆさに脳をかき乱される。そしてこの罠から一刻も早く抜け出したいと不快感に支配されながら迎えるエンドロールで、得体の知れないカタルシスを味わうとき、それがポランスキーの思惑通りだったと気付かされて呆然とするのだ。くやしい。もう一回最初から見直して答え合わせしたいが、もういやだ。そういえば作中にケンウッドの調理用ミキサーが登場して、おお、欧州では家電メーカーなのか!そうか!という発見をしたのであった。