銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】残された者-北の極地

劇場で観た映画を適当に紹介するシリーズ’19-59
『残された者-北の極地』(2018年 アイスランド)
 

うんちく

『偽りなき者』『永遠の門 ゴッホの見た未来』やドラマシリーズ「ハンニバル」などで活躍するデンマーク出身の俳優マッツ・ミケルセンが主演を務めたサバイバルドラマ。飛行機事故で北極圏に取り残され、孤立無援で自然の脅威と闘う姿が描かれる。監督はブラジル出身のジョー・ペナ。短編映画制作を経て、本作で長編映画の監督デビューを果たした。「ハンニバル」などのマーサ・デ・ラウレンティスが製作総指揮として参加している。
 

あらすじ

飛行機事故で北極地帯に不時着したパイロットのオボァガードは、壊れた飛行機をシェルターにして白銀の荒野を毎日歩き回り、魚を釣り、救助信号を出すという日々のルーティンをこなしながら、救助を待っていた。しかし、ようやく救助に来たヘリコプターは強風に煽られて墜落し、女性パイロットは大怪我を負ってしまう。瀕死の彼女を救うため、ついに自らの足で窮地を脱しようと決心したオボァガード。危険を承知で勇気ある一歩を踏み出すが...
 

かんそう

北欧の至宝、マッツ・ミケルセンを97分間愛でる映画です。以上です。と言いたいところだが、映画と全く関係のない私的な話をすると、12月初旬にこの作品を鑑賞してから現在に至るまでのあいだに「引越し」という人生におけるストレス要因の上位にランクインする一大イベントがあり、レビューを書くような余裕があるわけないだろう。したがってレビューを書けるほど細かいディテールを覚えておらんのだが、おぼろげな記憶とネットに散らばっている情報をつなぎ合わせながら作品について紡いでみると、2018年のアイスランド映画だ。原題は『Arctic(北極圏)』、タイトルから察するに、マッツはどうやら北極に不時着したらしい。果てしなく広がる白銀の世界で、取り乱すことなく淡々とルーチンをこなしている姿は、長いあいだ1人でサバイブしてきたことを物語っている。生きている登場人物はマッツ、ほぼ意識がないアジア系女性のみ。概ねマッツの一人芝居であり、台詞は極めて少なく、その状況を説明する描写もない。にも関わらず、極限の状況に置かれ、物理的、心理的な困難と対峙する人間の感情が揺れ動くさま、葛藤と苦悩を余すところなく映し出しており、終始張り廻らされた緊張の糸に巻き取られ、心を激しく揺さぶられる。しろくまこわい。一言で表すと、すげーよかった。(おい