銀幕の愉楽

劇場で観た映画のことを中心に、適当に無責任に書いています。

【映画】20センチュリー・ウーマン

f:id:sal0329:20170611193759p:plain

劇場で観た映画を適当に紹介するシリーズ’17-31
20センチュリー・ウーマン』(2016年 アメリカ)
 

うんちく

自身の父親を題材にした前作『人生はビギナーズ』が絶賛されたマイク・ミルズ監督が、自身の母親をテーマに制作したヒューマンドラマ。1970年代末の南カリフォルニアを舞台に、15歳の反抗期の息子と自由奔放なシングルマザーの親子、彼らを取り巻く人々のひと夏の物語を描き、第89回アカデミー賞において脚本賞にノミネートされた。『キッズ・オールライト』などのアネット・ベニングが主演を務め、『フランシス・ハ』などのグレタ・ガーウィグ、『ネオン・デーモン』などのエル・ファニングらが共演。
 

あらすじ

1979年のカリフォルニア州サンタバーバラ。シングルマザーのドロシアは、思春期を迎える15歳の息子ジェイミーの教育に悩んでいる。息子の身を案じたドロシアはある日、下宿人の写真家アビーと、近所に住むジェイミーの幼なじみのジュリーに「複雑な時代を生きるのは難しい。彼を助けてやって」と相談する。不安定なジュリーは相変わらずジェイミーを翻弄し続け、パンクやニュー・ウェイブウーマンリブの洗礼を受けたアビーはジェイミーにポップ・カルチャーとフェミニズムを授けるが…
 

かんそう

とにかく心地よい。どこを切り取っても、映像と音楽が素敵なのだ。70年代の街並み、インテリア、車、ファッション、カルチャー。当時の南カリフォルニアの空気感がノスタルジックに伝わってくる。20世紀後半の世相を描くドキュメンタリーのように、リアルな日常の描写を積み上げていく。大恐慌時代を生き抜いた55歳のシングルマザードロシア、24歳のパンクな写真家アビー、セラピストの母親の呪縛に苦しむジュリーの3人はそれぞれ「20世紀を生きた女性」の象徴だ。抑揚気味なのにエモーショナルな演出、気が利いた、それでいて無駄のない脚本が良い。キャストも絶妙で、アネット・ベニングを筆頭に俳優の演技が素晴らしい。父親を題材に描いた前作『人生はビギナーズ』も良かったけれど、本作がマイク・ミルズ監督のマスターピースとなるだろう。